秋の味覚の代表といえばやっぱり「きのこ」。
その「きのこ」のなかでも、最も代表的な品種といえば間違いなく「しいたけ」でしょう。
しいたけの本来の旬は秋ですが、人工栽培が発達したおかげで、今では一年を通して食べることができます。
そんな身近なきのこであるしいたけですが、栽培の歴史は意外と浅く、人工栽培が確立したのは昭和に入ってからです。
それじゃあそれ以前はどのように栽培していたのかというと、「原木に鉈で傷をつけて、その傷口にしいたけの菌が自然に飛んでくるのを待つ」というギャンブルのような方法で栽培をしていたのです。
この栽培方法を「鉈目栽培」というのですが、この栽培と呼ぶのも微妙な手法は、現在の原木にドリルで穴をあけて直接菌を打ち込む「人工栽培」が確立してからは、当然のように行われることは無くなりました。
実際のところ、鉈目栽培が人工栽培より優れているところは全くありません。
無理やり優れている点を挙げるのなら、「菌を買わなくても良い」というくらいでしょう。
そもそも鉈目栽培は可能なのか
それ以前に、そもそもこの鉈目栽培というのは本当に可能なのか?
という疑問が発生します。
私も自宅の裏山で原木しいたけを栽培しているのですが、鉈目栽培など行ったことがありません。
調べてみても、現在鉈目栽培を行っている農家などいるわけもなく、「そういう栽培方法があった」ということくらいしか分からないのです。
そこで今年は、10月に台風が2度も直撃してしまいナラの木が大量にに手に入ったこともあり、この機会に鉈目栽培に挑戦してみることにしました。
人工的な植菌をしない、大昔のギャンブル栽培に挑戦です。
原木の準備
私の住んでいる地域では、しいたけの植菌は「梅の花が咲く頃に」と言われているので毎年3月上旬頃に植菌しています。
現在では、晩秋から春にかけてしいたけ菌が売り出されるので広い時期に菌打ちができますが、鉈目栽培ではしいたけが発生している時期にしか栽培ができない(胞子が飛んでこない)ので、その時期に原木を入手する必要があります。
私の栽培している原木しいたけは「中低温性の春秋出系品種」というもので、春は3月~5月、秋は10月~12月にかけて発生するので10月までに原木を準備します。

今回使用する原木です。直径8cm~15cmの太さのものを20本用意しました。
通常の栽培方法では1か月以上原木を乾燥させ、適切な水分量になってから植菌しますが、鉈目栽培では菌が入る時期を自分で選べないので原木の乾燥具合に気を付ける必要はありません。
菌が飛んでくるのを待っている間にも原木は乾燥していくので、今回は短めの20日程度の乾燥で使用しました。

このように原木の表皮に傷をつけて内部の辺材が見えるようにします。
鉈目栽培というものの、傷がつけれれば斧でもノコギリでも構いません。
あまり傷をつけすぎると他の雑菌が入り込む可能性も高くなるので、1本につき10か所程度にしておきました。
原木の積み上げ

しいたけの胞子が入りやすいように、すでにしいたけが発生している榾木(ホダ木)の隣に原木を置くようにしました。
鉈目をつけた原木は雑菌が入りやすいので、原木が直接地面に触れないようにします。
今回は、杉の丸太を一番下の段に置いて少し浮かせるようにしました。

成功の可能性をさらに高めるために、榾木と原木を交互に積み上げました。
榾木と原木を交互に積み上げる理由は、菌が充分にまわった榾木を他の原木と接触させておくと、菌糸が伸びて相手に移ることがあるからです。
まとめ
鉈目栽培を行うのは初めてなので、栽培方法の正解は分かりませんが、注意点をまとめるとこんなところでしょうか。
- しいたけが発生している時期に原木を準備する。
- 原木はちょうど良い乾燥具合よりも早い状態のものを使う。
- 他の雑菌が入らないように傷をつけすぎない。
- 原木と榾木(ホダ木)はできるだけ近くに置く。できれば交互に積むくらいが良い。
- 鉈目の原木は雑菌が入りやすいので直接地面に置かない。
上手くしいたけの胞子が飛んで来てくれることを期待して、しいたけの発生が終わる12月末まで待ちたいと思います。
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