食物繊維ってなんだ?|第六の栄養素、食物繊維

雑穀

今では健康維持に欠かせないものとして「第六の栄養素」とまで言われるようになった食物繊維ですが、昔は野菜から栄養を除いた「残りカス」だと考えられていました。

なんとなく体に良いことは分かる食物繊維ですが、実際に体の中でどのような働きをしているのでしょうか。

食物繊維の役割

「第六の栄養素」と言われる食物繊維ですが、食物繊維自体に栄養はなく、ほとんど消化されずに便として排泄されてしまうため厳密には栄養素ではありません。
食物繊維の主な役割は「腸内にある食べ物の残りカスを掃除しながら進み、体外へ排出すること」です。

腸内は高温多湿の環境なので、食べ物の残りカスがいつまでも残っていると、腐敗して悪玉菌が増え腸内バランスが崩れてしまいます。
腸内バランスの悪化は便秘や下痢の原因になり、ひどくなると腸炎や大腸がんの原因にもなります。

もう一つの役割は「腸内の善玉菌を増やすこと」です。
食物繊維は人間の消化酵素では分解できませんが、腸内に住む細菌は食物繊維を発酵させ分解することができるのです。

人間の栄養にはならない食物繊維ですが、善玉菌のエサとなって善玉菌を増やすことで、結果として腸内バランスを健康に保ってくれているのです。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維

一言に「食物繊維」といっても、実は食物繊維には2つの種類があります。
水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」です。

「水溶性食物繊維」は多くの水分を吸収して膨らむため、便の体積を増やして腸内の有害物質を吸着しながら、体外へ排出してくれる効果があります。
水溶性食物繊維には便を柔らかくする効果もあるため、便秘を予防したり、痔になりにくいという効果もあります。

対して「不溶性食物繊維」は、水分を吸収しても水溶性食物繊維ほど膨らみませんが、便を柔らかくする効果が高いので、腸内を便が通過する時間を短くしてお通じを良くします。

水溶性、不溶性のどちらも腸内環境を正常に保つためには欠かすことができません。

食物繊維の多い野菜

根菜

一般的に食べられている野菜のなかで特に食物繊維が多いのは、ゴボウやオクラ、カボチャ、ブロッコリーなどです。
ニンニクやトウガラシ、パセリなどにも食物繊維は豊富に含まれますが、これらの野菜をメイン食材として食べるのは難しいでしょう。

野菜以外では、大豆や玄米などの豆類や穀類、ワカメやひじきなどの海藻類、きのこにも食物繊維が多く含まれています。
特に海藻類は「食物繊維の宝庫」と呼ばれるほどに食物繊維が豊富に含まれている食材なので、積極的に取り入れていきたい食材です。

1日に必要な食物繊維

1日に必要な食物繊維の量は、成人男性で20g以上、成人女性で18g以上と言われていますが、男女ともに4~5gほど不足しており、食の欧米化が進んだ現代日本では、意識的に食物繊維を摂らない限り摂取目標をクリアするのはかなり難しくなっています。

とはいえ他の栄養素と同じく、食物繊維も過剰に摂取すると健康を害しますので、食物繊維が豊富な食材をおかずに1品増やしてみる、白米を玄米にしてみるなど普段の食生活を大きく変えないような方法をおすすめします。

日本人と食物繊維

世界広しといえども、日本人ほど食物繊維を多く摂ってきた人種はなかなかいません。
日本人は太古から穀物や芋類を主食とし、野菜や豆、きのこ、海藻類などの食物繊維豊富な食材を食べてきました。

食材としてゴボウを食べるのは日本人くらいですし、昔ながらの加工食品である「切り干し大根」や「かんぴょう」なども、食物繊維の宝庫です。
昆布やワカメ、ひじきなどの海藻類を食べる国も、世界的に見ればかなり少数派でしょう。

肉食文化への移り変わり

戦後数十年で、食の欧米化が急速に進みました。
日本人の食肉文化が始まったのも、戦後に欧米の食文化が入ってきてからです。

もちろん戦前にも狩猟や畜産の歴史はあったので肉を食べる人は一定数存在していましたが、日本人全体から見れば一部のことで、世間一般では穀物や野菜、魚介類中心の食生活をしていました。

 

人間は生活環境によって体質が大きく変化します。

例えば食物繊維が豊富な海藻ですが、日本人を含む一部の人種を除くと体内に海藻を分解する酵素を持っている人は非常に少ないと言われています。
日本人は古来から食物繊維を多く含む食材を食べることで、体が食物繊維を摂取することに適応してきたのです。

人間は環境に適応する生き物なので、このまま肉食中心の生活が続けばそれに適した体質に変化していくでしょう。
ですが、戦前の約1000年にわたって食肉から離れた文化を送ってきた日本人が、戦後のたった数十年で今の食生活に適応できるとはさすがに考えにくいです。

便秘や大腸がんを始めとする消化器系疾患の激増や、日本人の約半数が該当している生活習慣病などからも、早すぎる食生活の変化に適応できない体の負担が表れているように感じます。

日本人の健康のためには、今しばらく食物繊維を積極的に摂取する生活を維持する必要があるのではないでしょうか。

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86年生まれの酒が飲めない九州男児。 家庭菜園が好きすぎて自分の畑を手に入れるためだけに農家になった。 5年前に新規就農し、現在は野菜のネット販売でお金を稼ぎながら家庭菜園を楽しむ「JAに野菜を売らない農家」。 現在家庭菜園16年目。