乾田と湿田の違いとは

水田

田んぼは大きく分けて、「乾田」「湿田」に分けることができます。

田んぼなのに「乾」田?田んぼは湿ってるものじゃないの?

と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は乾田と湿田の違いと、その特徴を紹介します。

乾田と湿田の違いとは

簡単に説明すると

人工的に水を抜くことができて、地面を乾いた状態にすることができる田んぼを「乾田」
水を完全に抜くことができずに、常に地面が湿った状態にある田んぼを「湿田」
と言います。

たまに勘違いしている人がいますが、乾田は水を使わない稲作(陸稲)のことではありません。

そして、現在使われている田んぼのほとんどはこの「乾田」になっています。

湿田が減ったのはなぜか

現在の田んぼのほとんどが乾田になっているのには、もちろん理由があります。
湿田が乾田に比べて作業性が低いうえに、米の収穫量も少ないからです。

作業性が低い
現在の稲作は、その作業のほとんどが機械化されています。田起こし(田んぼを耕すこと)や稲刈りなど、昔は家族総出で数日かけて行っていた作業も、今では一人で行うことができるようになりました。

乾田であれば、田起こしのときには田んぼの水を抜いてしまい、畑と同じようにトラクターで耕すのですが、湿田ではこうはいきません。
水を抜くことができず沼のようになっている湿田では、トラクターが沈んでしまうため入ることができないのです。
例えトラクターがなんとか入れるような湿田であっても、乾田に比べて大きな手間と時間がかかってしまいます。

稲刈りのときも同様の問題は起こります。
稲刈りには「コンバイン」という収穫用の機械を使うのですが、コンバインが入れない湿田では昔のように鎌を使った手作業で稲を刈らなければいけません。
コンバインであれば数十分で終わる広さであっても、泥に足を取られながらの手作業では丸一日がかりの大仕事になってしまいます。

このように現在であれば機械で代用できる作業を、手作業で数倍の時間をかけて行わなければならないことが湿田が使われなくなった大きな原因になります。

米の収穫量が少ない
作業が大変でも、それに見合った収穫があれば良いのですが、一般的に湿田は乾田に比べて収量でも劣ります。

農家以外では聞き慣れない言葉かもしれませんが、稲作には「中干し」という作業があります。
中干しというのは、夏の暑い時期に田んぼの水を完全に抜いて、地面にヒビが入るくらいに乾かす作業です。
ここではあえて中干しの詳しい説明は省きますが、この中干しを行うことで根張りの良い強い稲になり、収量が増えるだけでなく品質的にも良い米が収穫できるようになります。

田んぼの中干し

湿田では水を完全に抜くことができないので、当然この中干しをすることもできません。
そのためどうしても乾田と比べると収量や品質が悪くなってしまいます。

私の土地にも常時水に浸かっている湿田がありますが、現に乾田と比較して作業に数倍の手間がかかるうえに、米の収量は2~3割程度劣ります。
そして乾田と比べて米の品質が特に優れているわけでもありません。

乾田と湿田の見分け方

乾田と湿田を見分ける方法ですが、一番簡単なのは「田んぼが使われていない時期に地面が乾いているかどうか」です。

乾田は通常稲作をしていないときには水が抜かれているので、雨が降った直後でもなければ地面にヒビが入るくらいに乾いています。
地面が乾いているので、田んぼの中を人が歩くこともできます。
それに対して湿田は水量の違いはあるものの、年間通して水に浸かっています。
地面は沼のようになっていて、とても人が歩くことはできません。

もう一つの方法は、灌漑(かんがい)設備が整っているかどうかです。
灌漑とは田んぼや畑に人工的に水を供給することです。
灌漑設備というと難しく聞こえるかもしれませんが、田んぼが家の近くにある人なら大きな水道の蛇口(畑かん)のようなものや、田んぼに沿って流れている水路を見たことがあるのではないでしょうか?

畑かん

乾田は田んぼを使用していないときには水が入っていません。
自然の雨に頼っていては稲作はできませんので、田んぼを使用する際はどこかから水を持って来なければいけません。
このように外部から人工的に水を供給する設備が乾田には必ず備わっています。

対して、湿田には常に水が入っているので灌漑設備は必ずしも必要ではありません。
湿田の中でも水の量が少ない「半湿田」といわれるような田んぼには灌漑設備がついていることもありますが、生産性の悪い田んぼに灌漑設備を設けるのはコストに見合わないので整備されていないことが多いです。

湿田のメリットはないのか

さきほどから湿田の悪い面ばかり書いてしまいましたが、湿田に何かメリットはないのでしょうか?

残念ですが、事実として「稲作において湿田が乾田に勝るところは何もない」といって差し支えありません。
作業のほとんどが手作業で、灌漑技術も未熟であった大昔なら、水を引いてこなくても稲作ができる湿田が好まれることもありました。
ですが、機械化が進み灌漑技術も発達した現在では湿田にはデメリットしかありません。

それでも湿田は守るべき

稲作において不便にしかならない湿田ですが、湿田が何の役にもたたないか?というとそんなことはありません。
確かに稲作においての湿田は不便以外の何物でもありませんが、常に水が入っている湿田は水生生物の貴重な棲み家になります。

私が管理している湿田でも、今では絶滅危惧種に指定されているタガメやゲンゴロウをはじめ、イモリやサワガニ、カエルやヤゴなどの多種多様な生き物を見ることができます。
そしてそれらを餌にする、カモやサギなどの多くの鳥も飛来します。

タガメ

乾田にももちろん生き物はいますが、その豊富さと多様性は湿田とは比較になりません。

管理が大変で年々数を減らしている湿田ではありますが、できる限り守っていくべきものです。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

86年生まれの酒が飲めない九州男児。 家庭菜園が好きすぎて自分の畑を手に入れるためだけに農家になった。 5年前に新規就農し、現在は野菜のネット販売でお金を稼ぎながら家庭菜園を楽しむ「JAに野菜を売らない農家」。 現在家庭菜園16年目。