雄性不稔野菜は危険なのか|F1品種の勘違い②

カゴに入った野菜

そもそも雄性不稔とは?

雄性不稔(ゆうせいふねん)とは、雄しべに花粉がない、もしくは花粉に受精の能力がない個体を言います。
人間でいう無精子症のようなものです。

なぜF1品種の話で雄性不稔が関係してくるのでしょうか?
その説明のために、まずはF1品種について簡単に説明しておきましょう。

F1品種と雄性不稔

F1品種とは、簡単に言うなら「両親の良い点だけを受け継いだ子どもを作る技術」です。
例えるなら、「味の良いトマト」と「病気に強いトマト」を掛け合わせて「味が良く病気にも強いトマト」を作り出すということです。
この現象は「雑種強勢」といって自然界でも普通に起こり得ることなので、別に悪いことではありません。
しかし、これを人為的に行おうとすることである問題が起こるのです。

植物は人間と違って1つの固体に雄しべと雌しべがあるので、自分の花粉で受粉してしまう「自家受粉」という現象が起こります。
F1品種を作るには異なる親どうしで受粉させる必要があるため、自家受粉が起こらないようにする必要があります。
そのため、昔はひとつひとつ手作業で雄しべを取り除いて自家受粉が起きないようにしていました。

ただ手作業で雄しべを除く作業は非常に手間がかかるので、F1品種の種を作るうえで大きな負担となっていました。
そこで注目されたのが、突然変異で偶然生まれた雄性不稔の個体なのです。

片方の親が雄性不稔であれば、自家受粉をすることがないので手間をかけずに目的のF1品種を作ることができます。
F1品種の種を作る業者は、この雄性不稔の個体を選別して増やすことで多くのF1品種を効率的に作り出してきました。
その結果、F1野菜の多くはこの雄性不稔の個体を使って生産されるようになり、雄性不稔の親から生まれた野菜が数多く店頭に並ぶようになったのです。

雄性不稔の何が問題なのか

簡単にまとめると「雄性不稔という遺伝子異常を持った野菜を食べることで、人体に悪い影響があるのではないか」ということが問題視されているのです。
在来種・固定種の種苗店として有名な野口勲氏も「雄性不稔の野菜が男性不妊の原因の1つではないか」という仮説を立てられています。

ただ、現段階で雄性不稔と人体への影響について科学的な証明はされていません。
雄性不稔と男性不妊の仮設を立てられた野口勲氏本人も、科学的な根拠はないと仰っています。
どうやら雄性不稔がこれほど問題視されるようになった背景には、野口勲氏らの主張に賛同した方々が、まるでこの仮説を真実であるかのように広めていったことが原因のひとつにあるようです。

F1品種は安全なのか?

少なくとも現段階でF1品種の人体への危険性は証明されておらず、安全だと言っても差し支え無いと思います。

確かに雄性不稔は突然変異で生まれた異常な個体で、本来自然淘汰されるべきものであるのは間違いありません。
ですが、そもそも私たちが食べている野菜のほとんどは在来種を含め「突然変異を起こした品種を人為的にを選別してきたもの」です。
キャベツやカリフラワーをはじめとする「人間の手が入らなければ間違いなく自然淘汰されてきたであろう野菜」を食べ続けることが危険だと考える人は、流石にいないのではないでしょうか?

少なくとも、あるかもしれない可能性に怯えながら日々を過ごしている方がよほど不健康だと思うのですが…。

自分で考えて判断することが大切

過去に「奇跡の鉱物」と呼ばれたアスベストや、多くの電化製品・スプレー剤に使用されてきたフロンガスが今では使用禁止になっているように、将来的にF1品種の危険性が証明される可能性は否定できません。
ですが、F1品種が現在の日本の食卓を支えている貴重な存在であることは紛れもない事実であり、明確な根拠もなく排除されることはあり得ないでしょう。

この世に「絶対安全」などという言葉は存在しません。
危険な可能性があるものをどこまで受け入れるか、それを自分で判断して納得することこそが重要なのです。

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ABOUTこの記事をかいた人

86年生まれの酒が飲めない九州男児。 家庭菜園が好きすぎて自分の畑を手に入れるためだけに農家になった。 5年前に新規就農し、現在は野菜のネット販売でお金を稼ぎながら家庭菜園を楽しむ「JAに野菜を売らない農家」。 現在家庭菜園16年目。