F1品種は危険なのか|F1品種の勘違い

子猫とひよこ

私たちが普段口にしている野菜は、大きく分類すると「固定種」と「F1品種」に分けることができます。
➡ 固定種と在来種、F1品種の違いとは

F1品種の野菜は固定種に比べて成長が早く、形や大きさ、収穫時期も揃っているので、「作業の効率化をしたい生産者」と「見た目と値段の安さを重視する消費者」の両方に対して受けが良く、急激に広まっていきました。
現在では流通している野菜のほとんどはF1品種になっていて、昔ながらの固定種は今や絶滅危惧種となっています。

もはや日本の農業には欠かせない存在になったF1品種ですが、一部ではこのF1品種を不安視する声もあるようです。

いろいろな意見がありますが、特に多く取り上げられるものとしては

  • F1品種の野菜は固定種に比べて味が悪い
  • 雄性不稔の野菜を食べると危険

この2点だと思います。

今回はこの2点について個人的な意見を書いてみようと思います。

F1品種の野菜は味が悪い?

食べ物がマズイ

「昔の野菜は味に深みがあって美味しかった。最近のスーパーに売ってる野菜は味が薄くて美味しくない。」

このような意見をいう方は特に中高年に多く、農家をやっていると中高年の方とお付き合いすることが多いので、こういった話を聞くことは珍しくありません。

「最近の野菜」といえばF1品種がほとんどなので、「最近の野菜は美味しくない」=「F1品種は美味しくない」という流れになったのだと思いますが、本当に最近の野菜は美味しくないのでしょうか?

「F1品種」=「美味しくない」というのは誤解

「F1品種が固定種に比べて味が劣る」というのは、おそらくF1品種に対する最も多い誤解だと思います。
しかし、結論から先に言うとF1品種が固定種に比べて味が劣っているわけではありません。

とはいえ「昔の野菜の方が美味しかった」という方々の言葉がただの記憶違いというわけでもないので、まずは日本でF1品種が広まった背景について説明したいと思います。

そもそもF1品種とは

日本でF1品種がこれほどまで広がった背景には、土地の狭い日本の農家が全国の消費者に野菜を安定的に提供するために「作業の効率化」を求めたことにあります。

F1品種は生育が揃っていて収穫が一度にできるため、日本の狭い土地を効率的に利用できるうえに、形や大きさが均一なので箱詰めなどの出荷作業も効率的になります。
さらに同じ土地で同じ種類の野菜を栽培することにより高まる病害虫のリスクも、耐病性を持たせた品種を育てることで緩和できます。

それだけではありません。
野菜はスーパーなどの店頭に並んでいるものだけではなく、現在ではコンビニの総菜やファミレスのサラダバーなど、工場等で加工されてから店舗で消費される野菜の方が多くなっています。

こういった商品は均一性が重要視されるので、味の良し悪し以上に品質が安定していることが求められます。
品質や大きさが上下する固定種の野菜よりも、加工しやすい大きさの揃った野菜が求められるのです。

つまり大量生産と安定供給のため、品質の均一化や耐病性に重点をおいて品種改良をしてきたので、味については後回しになってきたという背景があるのです。

最近は味も重視されてきたが・・・

作業の効率化をしたら次は味、ということで最近は味についても重視された品種が増えてきています。
しかし、味を重視した品種を一般的に流通させるのはなかなか難しいでしょう。

というのも大量生産した野菜を全国に流通させるためには、多くの人に受け入れられる味にする必要があります。

野菜独自の「旨み」や「クセ」というものには「苦み」や「辛み」も含まれます。
これは個人によって好みが分かれる味なので、多くの人に食べてもらうには向いていません。

結果として好みの分かれる「苦み」や「辛み」といった野菜独自の特徴を薄くして、多くの人に受け入れられやすい「甘み」や「食べやすさ(柔らかい・種がない等)」が重視されてしまうのです。

悪い言い方をするなら、多くの人に「嫌われない」ことを目的としているのでその野菜独自の特徴がなくなってしまい、嫌われることはないものの、特別好かれることもない野菜というのが現在のF1品種の傾向になっているのです。

F1品種は時代によって変化するもの

今までのF1品種は「規格化」と「万人受け」を重視して開発されてきました。

これはF1品種の問題ではなく生産者と消費者の問題なので、市場のニーズに応えて開発した最近のF1品種と昔の固定種の味を比較して、F1品種の良し悪しを判断することはできません。
「固定種のような味のF1品種を作るのは可能だが、あえて作っていない」というのが現実なのです。

 

最初の話に戻りますが、F1品種が固定種に比べて味が劣るということはありません
「F1品種より味の良い固定種」もあれば、「固定種より味の良いF1品種」もあります。

現状F1品種が味を重視していないというのは事実ですが、消費者の大多数が味よりも見た目や値段を重視する現状では、味を重視した野菜が流通することは難しいでしょう。
消費者の意識が変わってくれば、当然F1品種のあり方も変わっていくのです。

次の記事➡雄性不稔野菜は危険なのか|F1品種の勘違い②

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ABOUTこの記事をかいた人

86年生まれの酒が飲めない九州男児。 家庭菜園が好きすぎて自分の畑を手に入れるためだけに農家になった。 5年前に新規就農し、現在は野菜のネット販売でお金を稼ぎながら家庭菜園を楽しむ「JAに野菜を売らない農家」。 現在家庭菜園16年目。